リノベーターズインタビュー

中村親方(70代)

生地屋で2年間働いた後、アパレル会社で16年間サラリーマンとして働く。 40歳の時、会社の倒産を機に自身でアパレル会社を起業。企画・販売・生産・営業・経理と全て自身で手掛ける。 約20年間会社を経営。その後60歳の時に経営していたアパレル会社を自主廃業し、以前よりDIYが好きだったこともありクロス職人へ転身。 未経験ながら親方の下について仕事を習得し、現在は「一人親方」として活躍中。

サラリーマンからクロス職人へ

今回お話を伺った中村さんは、サラリーマンとしてアパレル会社で働いた後、自身でアパレル会社を約20年間経営されました。 その後、ファストファッションなどの普及により、事業の転換を考え、自主廃業。 60歳でクロス職人の道へ。  しかし、クロス職人になるという選択肢は、当初中村さんの中にはなかったそうです。 そのきっかけは、何気ない知人とのやり取りから生まれました。  

きっかけは知人の言葉とタイミング

もともと、DIYが好きだった中村さん。 自宅や会社の事務所のクロスをご自身で貼っていたそうです。 事業の転換を考えていた折、下請けの工務店に勤めている昔からの知人と連絡を取っていました。 中村さんが、「何かいい仕事はないか?」とその知人の方に聞いたところ、 「よくクロスを貼っているんだから、クロス屋になればいいじゃないか」 と、言われたそうです。 そしてその翌日、その方から「仕事が見つかったよ」と連絡が! 中村さんはその仕事をやろうと決意し、会社をたたみました。

突然の仕事の喪失。同級生との偶然の出会い

しかし、仕事を始める数日前、アクシデントが起こりました。 紹介してもらった仕事先から「もういいよ」と受け入れを断られてしまったのです。 会社をたたむ手続きなどで3か月待ってもらっていたため、心変わりしてしまったのでしょうか。 働く以前での仕事の喪失。当時58歳でした。 中村さんは、早く技術を身に付けるため、大きい会社ではなく一人親方のところで、見習いからでも受け入れてくれる仕事先を改めて探しました。 そして、無事新たに決まった仕事先で2か月の下働きを経て、約半年間見習いとして技術を覚えた後、独り立ち。 工務店の知人の方から仕事をもらうようになりました。 全てタイミングが良かったと、中村さんは言います。 しかし、しばらくしてその知人が体調を崩されたため、仕事がまばらに。 そのため、新たに仕事先の開拓を始めました。すると、程なく近くの工務店と良い出会いがありました。 その工務店の社長は、偶然、中村さんの中学校の同級生だったそうです。 話をすると、1~2週間で仕事をもらうことができました。 それも、ダブルブッキングしてしまうほどたくさんの仕事が、中村さんのもとに舞い込んできたそうです。 本来は、見習いで勤めた先から仕事をもらうのが普通。 中村さんは、偶然の出会いから多くの仕事をもらうようになったことを、「運が良くて、特殊だ」と言います。

仕事は見て、やって、覚える

クロス職人とはいえ、絨毯やCF(クッションフロア)、タイルなど、内装全般を行っている中村さん。 内装が一通りできないと、仕事が限られてしまうそうです。 変わったものでは階段の滑り止めの取り付けもしました。 その技術は独立後、実際の仕事の中で覚えたそうです。 現場で階段の滑り止めをやったことがないと言う中村さんに、現場監督はとりあえずやってみればいい、失敗したっていいじゃないか、と言いました。 それを受けて中村さんは、とにかく挑戦。 さすがに一人では難しいものは、見せてもらえる現場に見学に行って学んだそうです。 また、動画サイトには作業の工程を載せたものがあり、サンプルを取り寄せ、それを見ながら自宅で練習をしたことも。動画を見ながらやれば、素人でもできると中村さんは言います。 はじめのうちは時間がかかるけれども、現場の技を見て、現場で実践して覚えていく。 そうして技術を習得していったそうです。 その努力によって、1年目から他のクロス職人に引けを取らないほどバリバリ働いていきました。

活きる過去の経験。40、50代でもできる

技術を着実に身に付けていった中村さん。それでも、手に負えないものは外注して仕事をしました。困ったときは自分で抱え込まず、協力会社を頼る、ということも大事だと知っていたからです。 その発想も、以前アパレル会社を経営していた経験があったからこそ。 また、反物とクロスでは、色の違いや扱い方に似たところがあり、こちらもその時の経験から、全く抵抗なく理解できたそうです。 中村さんが一番大切にしているのは「絶対にクレームのつかない仕事をする」こと。 やりっぱなしは絶対にせず、必ず点検を行っています。これもまた、以前のアパレルの仕事で細かい点検が多かったことが大きいと言います。 一番目につくからこそ、点検が大事。しかし、現場では点検をしない人が多いそうです。 中村さんにいつまでこの仕事をしたいかと伺ったところ、「動ける間は生涯現役でやりたい」 と答えてくださいました。趣味から始まった仕事であるだけに、この仕事は苦ではないとのこと。 周囲を見ても、クロス貼りに加え、内装(クッションフロアやじゅうたんなど)が一通りできれば、それなりに稼いでいる人もいるようです。  年だからではなく、個人を見なければいけないと中村さんは言います。 40、50代でも、やる気さえあれば誰でもできる、と強くお話しされていました。