リノベーターズインタビュー

設計士

松本導枝さん(30代)

美術大学でグラフィックなどのデザインを学ぶ。 卒業後、大手家電量販店にて店舗内のPOPやポスターなどの販促デザインを担当。新店舗の立ち上げ、PB商品開発などを経験したのち退社。 住宅の設計事務所を経て、現在は銭湯専門の設計事務所にて、設計・デザインを担当している。

キャリアの出発は、店舗の販促デザインから

新卒で入社した大手家電量販店には、一足先に内定者アルバイトをしていた同じ美大の友人からの紹介がきっかけで、採用が決まりました。

それまで専門外の社員が行っていた店舗内のPOPやポスターなど販促物の作成を、デザインを専門に学んだ人に任せてみようということで、人材を探し始めたタイミングにぴったり合ったようです。店舗で1年間働いた後、企画部に配属となり、店舗内の販促デザイン全般を任されました。

新店舗立ち上げで、ものづくりの面白さに出会う

入社2年目から、販促デザインの担当者として新店舗の立ち上げに加わることになりました。日本全国を飛び回って、17店舗ほどの新規オープンに関わったことになります。 店内のPOP全てデザインして、プリントして、切って貼って…、と全部やってました(笑)。

そんな中、美容家電というものが世間で流行り始め、大型店舗に女性向けの美容コーナーを立ち上げることとなり、その企画・デザインを任される機会を得ました。この仕事で初めて、店舗デザインを専門にしている設計デザイナーの方と一緒に仕事をしたのですが、実はそれまで、こうした専門の職種があることさえ知らなかったんです。

この仕事がきっかけで、都内の新規大型店舗の出店で、美容家電コーナーのデザインも担当させていただきました。

現場監督や職人さんとやり取りを重ねながら、素材を選んだり什器を設計したり、1つのものを作り上げていく店舗デザインの仕事に間近に触れて、ものづくりの面白さを実感しました。長い時間をかけて、ゼロからスタートしたものが形になっていく現場に毎日ワクワクしました。 いつか、自分も設計の仕事をしてみたいと考えるようになったのは、この出会いがきっかけです。あの時「お前ならできる」と声をかけていただいた上司、設計を教えてくれた設計士さんへは、感謝してもしきれません。

誰のための仕事?迷いが消えず転職

けれど、こうして1つ1つを積み上げて作った店舗デザインが、理不尽な理由でボツになってしまうこともあるんですよね。正直、誰のために仕事をしているのかが分からなくなってしまうこともありました。

最初の会社にはトータルで10年勤めたのですが、売り場作りの勉強にと、仕事をしながら通っていたインテリア学校の先生に誘われて、住宅設計事務所へ転職を決意しました。

転職の背中を押したのは、やはり店舗立ち上げで知ったものづくりの現場への憧れだったんですね。
その後、現在の設計事務所へ再度転職し、現在丸2年が経ったところです。

お客様の顔が見えてこそ、仕事にはやりがいがある

今の仕事と量販店での仕事とで、一番違いを感じる点は、何と言ってもお客様との距離です。

大きい会社では、仕事が細分化されているために自分の仕事が最後まで見えないうえに、会社のため、もっと言ってしまえば、上司のために仕事をしているようなところもあったように感じています。最終的に売り場に立って判断するのはお客様なのに、何であなたの好き嫌いで決めなきゃいけないの!?みたいな(笑)

それに対して、今の仕事は直接お客様と接することで、お客様の要望を目に見える形に実現させているという実感があります。お客様の顔が見える仕事、なんですよね。お客様自身が思い描いていた以上のものを形にし、お客様に喜んでいただけるという手応えがやりがいにつながっていると思います。

大企業からの転職、迷いは?

大企業に属していれば経済的な安定は得られるかもしれないけれど、自分の場合はお金のためだけという働き方はしたくなかったので、よりやりがいを求めた転職という選択に迷いはなかったです。

「何のために生きていきたいか?」が明確であれば、「今は収入を得るために働いている。」とか「今はスキルアップしたいから、小さい会社で何でもやってみる。」とか、人それぞれの価値観やタイミングで選択していけばいいのであって、どのような選択も正解だと思います。

実は、将来的には、“遊び”で建築がしたい、と思っているんです。『食べる為 -ライスワーク-』の設計ではなく、『楽しさの為 -ライフワーク-』。純粋に楽しんで、遊ぶかのごとく無邪気さで設計がしたい。建築が好きな人、いろいろなスキルを持つ人が集まって、一緒にものづくりをしたいという夢があって、今はそのために勉強をしている準備期間と位置づけています。

当たり前だと思っていたビジネススキル、実はすごい強み!

多くの人と関わる大企業で学んだ基本的なビジネススキルは、今の仕事にもとても活きていると感じています。入社と同時に社員研修でしっかり仕込んでもらえるのは大企業ならではのメリットですよね。大学を卒業してからすぐに個人事務所で働き始めた場合などは、それらを一から学べる環境にはないですから。

会社を出てみると、挨拶や電話応対、メールでのやり取りといったコミュニケーションの基本的なマナーなど、出来て当たり前だと思っていたビジネススキルが身に付いていない人や、議事録などの文書作成がしっかり出来ない人も多いことに少し驚きました。

例えば、議事録を正しくとることは設計の仕事ではとても重要で、お客様との打ち合わせの記録を正確に残しておかないと、お客様の要望と違う誤った方向に仕事を進めてしまうかもしれない。他のメンバーに正しく情報が伝わらず、お客様との間でも、言った、言わないのクレームにつながりかねないですよね。議事録スキル、地味ですが大事です(笑)。

もちろん、2Dデザインのスキルもロゴやパンフレット作成などで今の仕事に活きています。「設計もできるけど、2Dデザインもできます!」という、他の人が持っていない引き出しを持っていることは強みになっていると思います。

目指すのは、リアルにつながる居場所づくり

夢は、本当の意味での建物=場所をつくることです。建物をつくって終わり、ではなく人が集まる“場”をつくりたいと思います。そういう場所づくりに共感してくれる仲間を集めて、人が集まってつながる仕掛けづくりまで手がけてみたいですね。

今の時代は、SNSなどで表面的につながっているけれど、だからこそリアルにつながれる場が必要になってくると思います。

ライフシフトできるのは、こんな人

何かのスキルを提供できる人になっていかないと、この先、必要とされる人になれないと思っています。一方的に求めるだけでは人とつながれない。待っているのではなく、自分からアウトプットしていくこと、「起こす」人になることが大事なんだろうな、と最近強く感じるようになりました。

よく「良いものを作っているのだから、いつか気づいて貰えると」言っているのを聞きますが、その考えってもったいない。「いつか」がやってくるかなんて、誰も保証してくれない。今の時代、絶対に自分から発信していった方がトクだし、自分もまだまだですが、「発信する人」になるよう心がけています。

匠アカデミーは、未来の仕事につながるスキルはもちろん、人や仕事との関わり方を学べる場になっていると思います。目指すものが似ている人、これから一緒に何かがはじめられそうな人との出会いがある、ライフシフトの可能性を感じさせてくれる場です。

また、どんなことでも「体験してみる」ことも大切です。匠アカデミーは、建築(特に設計者)の世界ではなかなか体験できない「施工現場」を自分の手で経験できる、とても貴重な場です。現場だと、スケジュールもありますし、職人さんに嫌な顔されることが多いのかなと(笑)どんなに知識で知った気になっていても、「体験」に勝るものはありません。私のような、建築業界の経験が浅い人間でも、気軽に参加できる素晴らしいシステムです!

遊びながら建築を楽しめたら、幸せ❤︎

45歳くらいまでに、会社に属さなくても稼げる仕組みをつくりたいと思っています。自分が学んできたことをアウトプットするツールをつくり、収入の軸にできないか、と。
その先は“遊び”で建築をしながら、大好きな猫と一緒に(笑)、場づくりを楽しんで生きていけたら、すごく幸せなんじゃないかな。

夢を実現させるためには、自分のレールは自分で引いて、目標を明確にすることが大切。ちゃんと思い描いていることを文字に書いて、“夢”だけに終わらせない“目標”に据えて、日々、自分を奮い立たせているんです。